子どもの頃、うちにはピアノがありました。
マンションだったので、普通のピアノではなく電子ピアノです。
当時はかなり高価なものだったと思います。
でも、私はその音が好きではありませんでした。
なんだか違う。弾きたいとも思いませんでした。
母に「ピアノ習う?」と聞かれたこともあります。
「いい」
断りました。
電子ピアノはそのままほとんど弾かれることもなく、姪っ子が生まれたときに兄の家へもらわれていきました。
それで、私とピアノの話は終わったはずでした。
それから何十年も経って、夫と暮らし始めます。
夫は趣味でエレキギターを弾く人です。
家でギターを弾いているのを見ていたら、楽器っていいなーと思うようになりました。
私も何か習ってみたい。
ドラム?
バイオリン?
そんなことを考えていたら、夫がひと言。
「ピアノは?」
あ、ピアノがあったか!
子どもの頃、家にあったのに。
習うかとまで聞かれたのに。
すっかり忘れていました。
でも今度は、やってみようかなと思ったんです。
とはいえ、続くかどうかは分かりません。
40代の終わりになって、突然始めるピアノです。
最初に買ったのは、安い電子ピアノ。
まずはこれで十分。
ところが2年くらい経つと、本物のピアノが欲しくなってきました。
そして、念願のアップライトピアノを買いました。
初めて弾いたとき、やっぱり音の響きが違うと思いました。
すごく嬉しかった。
子どもの頃に感じていた違和感が、何十年も経ってやっと消えていくような感じがしました。
私はピアノの音が嫌いだったんじゃない。
あの電子ピアノの音が好きじゃなかったんだ。
そして、もう一つ。
母に「習う?」って聞かれたとき、習っておけばよかった。
今、こんなに苦労しなくて済んだのに。
そこはちょっと後悔しています。
今でもピアノは続けています。
音が好き。
弾けなかった曲が弾けるようになるのも楽しい。
だから毎日熱心に練習しています。
……とはなりません。
あまり練習してません。
先生は、大人の初心者に理解のある優しい人です。仕事や生活があって、いつも練習できるわけじゃないことも分かってくれます。
たぶん、それも続いている理由のひとつです。
子どもの頃に習っていたら、もっと上手になっていたと思います。
でも、今もピアノを弾いていたかは分かりません。
そう思うと、始める時期って不思議です。

